カテゴリ:映画( 33 )

 

「母たちの村」 (Moolaade)

フランス・セネガル合作

初めてアフリカ人監督によるアフリカの映画をみた。
西アフリカの小さな村で、ある日、女性(コレ)の下に、4人の少女が割礼を嫌がり逃げ出して来た。割礼が原因で、死産となった経験から、割礼を廃止しようと立ち上がるコレ。伝統を守ろうとしないコレに対し、力ずくで押さえつけようとする村の男性と、割礼を施す一部の女性との闘いというストーリー。

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「割礼(FGM: Female Genital Mutilation)」って単語だけではピンとこないが、かなりおそろしい儀式。部族によっていろいろなやり方があるらしいが、女性が浮気しないように、性的快楽を感じる場所をそぎ落としてしまうというのがもともとの発想。麻酔もなにもなく衛生状態もいかがわしいところで、これまた煮沸なんかしていないようなナイフで、10歳くらいの女の子を対象に、「あの場所」を切り落とすのを「お浄めの儀式」としているのである。想像しただけでも卒倒しそう。

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さらに面倒なのが、お浄めの儀式を終えていないと、男性が結婚しないというのが風習なのである。女性が一人で稼ぐような社会体制になっていない中で、結婚できないというのは死活問題。

この映画自体は、ある部族の生活を描きながら、その中でFGMを扱っているため、そんなに残酷なシーンもなく、かなりのんびりとした独特の生活を垣間見るという点でも結構新鮮。「他の世界」から隔離され、築かれてきた独特の伝統や慣習(呪いとか祟りとかも含めて)に基づき、これまでどおりの社会秩序を守ろうとする一方で、ラジオやPKOに参加した兵士、フランスに留学していた村長の息子などから「他の世界」との接触があり、ゆっくりではあるが変わっていかざるを得ない。FGMについても、それを守ろうとする既存の勢力に対し、自分の体験に加え、ラジオで知識を得た女性が異議を唱え、「他の世界」を知っている人がその女性の支持に回ったという構造。面白かったのは、女性の中でも、FGMを施す「権威」をもっている女性(赤い服を着ている人たち)は、当然、FGMの廃止に強く抵抗する点。

アフリカ人男性の監督(ウスマン・センベーヌ)だからこそ、描けた視点というのもあるであろうし、FGMに対するインパクトも大きいだろう。

都内では、6/17~岩波ホールで上演中
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by yokopw | 2006-07-24 00:08 | 映画  

さよなら、さよなら、ハリウッド / Hollywood Ending

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★★★
Woody Allenが演じるVal Waxmanは(いつもどおり)偏屈で愚痴っぽくって扱いが大変な、かつて名を馳せた映画監督。落ちぶれてTVコマーシャルしか撮影していなかったところに、前妻が映画の撮影を依頼。撮影に取りかかり始めてすぐ、精神病で目がみえなくなる。周りには気づかれないように撮影を進めていくというドタバタ喜劇。
(当然のことながら)ひどい作品で酷評されるが、何故かフランスでは評価されるという、皮肉っぽい終わり方が印象的。

精神病の理由が自分の息子との不仲ではないかということで、パンク青年の息子に会いに行くというシーンが、ちょっと意外だった。わざわざシーンとしてださないですませようとすればできたのではないかって気もするが、正面から勝負したって感じなのかなあ。ただこのシーンがあった方がよかったのかどうかは疑問だけど。

映画としてはまあまあ楽しめるって感じですかね。少なくとも「ヴァージンハンド(Picking Up The Pieces)」よりは全然面白かった。
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by yokopw | 2006-05-29 23:12 | 映画  

Heat/ ヒート

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★★★★
仕事に全人生をかけるプロフェッショナルな刑事と泥棒の1対1の戦い。
少数先鋭なプロの泥棒集団を率いていたNeil MacCauley(Robert De Niro)は、ついに生涯をかけて守りたい女性を見つけ、銀行強盗を最後に彼女をつれて国外に逃亡するつもりだったが、敏腕刑事Vincent Hanna (Al Pacino)に追い詰められる。

プロフェッショナルな活動を中心としつつ、私生活を挟み込む描き方、徹底したプロフェッショナリズムへの姿勢など、“Insider”と似たような雰囲気を感じると思ったら、監督がMichael Mannsで一緒だった。
刑事と犯罪者という相対立した立場の人間による、緊迫した1対1のやりとりという点で、”Infernal Affairs”を連想する。
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確かに早い展開にドラマ性が加わって170分飽きないものの、もう少しPacino やDe Niroのプライベートの部分を削って120分くらいにした方がよかったのではないかと思う。家庭を犠牲にして仕事に取り組んでいるプロとしての姿勢はよく伝わってくるものの、プライベートな部分にかなりの時間もさいている割には終わり方があっさりっていう印象を受けてしまった。
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by yokopw | 2006-05-29 23:04 | 映画  

A Touch of Spice

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“スパイス”のようにエスプリが効いていて、非常に印象的な映画。

監督のタソス・ブルメティスは、1957年イスタンブール生まれで、1964年に国外退去命令によって家族と共にギリシャに移住しており、主人公ファニスの経験は、監督自身の体験のようだ。映画から生まれ育った地としてのイスタンブールへの格別の思いが伝わってくる。

主人公ファニスは香辛料店を営むおじいちゃん子。おじいちゃんは、スパイスを使いながら、ファニスに料理、教養、生活の知恵など、様々な知恵・知識を授ける。
例えば、スパイスに関して、胡椒を太陽(全ての料理に必要)、シナモンをビーナス(女性をくどくにはシナモン?だったっけ?)、塩を地球、生命、そして人生(ないと味気ないものに)と表現。

しかし、キプロス島における争いをきっかけに、トルコはギリシャ人を国外追放することを決定し、ギリシャ国籍を持つ父とともに、ファニスはおじいちゃんや初恋の相手と別れてイスタンブールを離れることになる。アテネに移住しても純粋なギリシャ人でないことから順応できず、そのことがかえってファニスのイスタンブールへの思いを強くする。おじいちゃんのアテネ訪問の話もでるがドタキャンが続き、ファニスもイスタンブールへ脱走を企てるが失敗。

おじいちゃんが危篤の知らせを聞いて、ファニスは追放されてから初めてイスタンブールへ赴く。そこで、ファニスは、自分の人生にちょっとしたスパイス(a touch of spice)が欠けていたことを発見する。

私のイスタンブールの印象は、キリスト教とイスラム教とが入り混じり、いろいろな人種の人が生活している活気にあふれ、魅力的な大都市という感じ。実際に、その40年前の政治膠着に翻弄されたファニス、あるいは監督自身の人生とイスタンブールとを重ねて見ると、激動の歴史の中心に位置しているイスタンブールの別の表情を垣間見る気がする。
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by yokopw | 2006-05-07 22:34 | 映画  

Terminal

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設定自体は面白いと思ったが、映画としては正直、全然だった。
スピルバーク監督、トム・ハンクス主演でかなり評判もよさそうだったので、期待してみたのだが、かなりがっかり。

ある東欧の国出身のビクター・ナボルスキー(トム・ハンクス)がニューヨークに向かって飛行機に乗っている間に祖国がクーデターで消滅。入国審査で、消滅した国のパスポートは無効と出国拒否をされる。彼がJFKの国際線ロビーにいる分には、犯罪を犯しているわけでもないので、ロビーから一歩外に出て不法滞在とならない限り強制出国にはならない。そこで彼はターミナルで生活を開始。

この法制度の隙間に目をつけ、ターミナルでの生活を通して、清掃者や建設作業員などのブルーワーカーに焦点をあて、ある角度からのアメリカを描こうとしている点などは面白いとおもう。もちろん、トム・ハンクスの演技もいいんだけど、それを超えて、何週間もターミナルに留め置かれているっていう設定にもかなり無理があるなど、ストーリーがよく繋がっていないし、眠気をこらえながら、見切った感じ。同じ設定でも、ストーリー展開をかえればもっと、面白くなったんじゃないかなあ。
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by yokopw | 2006-05-07 21:36 | 映画  

Sideway

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対照的な二人の男性が気儘な1週間のカリフォルニアワイナリー&女性めぐりを経て、自分自身を見つめなおすという、精神的な動きを追った映画。

マイルスは、うれない作家で離婚からの後遺症から立ち直れていない。ジャックは、これまたあまり成功していないTV俳優で、結婚を1週間後に控え、独身最後の旅に二人で出かけることに。何事にも消極的、現実逃避的、特に女性にナイーブになっているマイルスと、無鉄砲で楽観的なジャック。

若くはない二人が羽目をはずすためにふらっとでかけた1週間の旅行を経て、ジャックは元の奥さんへの感情的な固執から離れるきっかけをつかみ、結婚に揺れていたジャックも、婚約破棄が現実に迫る事件を経て、婚約者を失いたくないと自覚。


f0064307_22544061.jpg"The Hours"もそうだったが、微妙な心理描写を中心に展開するストーリを映画化した場合、映画ではうまく表現できず本の方が圧倒的によかった!ということになりがだが、"Sideway"は映画でもかなりよく表現されていたし、笑えるびっくりシーンも織り込まれていて、メリハリがきいている。心理描写映画でありながら、あんまり結末が渾然としていず、かなりシンプルにできているところは、やはりアメリカ映画ってところか。

計画性のないドライブ旅行、道路風景といい、モーテルやバーの様子など、とってもアメリカっぽい。「ワインは生きている」というワインの奥の深さも垣間見れる。観ながら、ワインを空けたくなった。
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by yokopw | 2006-05-05 22:49 | 映画  

Bon Voyage

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1940年、ドイツ軍が間近に迫ったフランス・ボルドーが舞台。危機対応で右往左往する大臣、原子爆弾の開発するユダヤ系の教授と何としても教授をイギリスに亡命させようとする助手、記者扮するドイツ軍スパイと、男を翻弄する女優ヴィヴィアンヌ(Isabelle Adjani)、女優にぞっこんの作家志望のフレデリックを中心に展開されるドタバタ喜劇。
ドイツ軍占領が迫り、さらに原爆に関係する重水をドイツ軍に渡さないよう国外を脱出しようとする教授となれば、かなり深刻な設定。それでありながら、自己中心的な女優に振り回される大臣やフレデリックとのラブロマンスが交差し、どことなく暢気さがあり、笑える。”Bon Voyage”というタイトルどおり、終わり方も前向き。
女優役のIsabelle Adjaniの嘘泣きや、うまく男性に媚びを売る様が、誇張気味で、でも、嫌味がなく、バランスがとれていてうまい。何が驚きって、彼女、当時48歳だったらしい。これはホラーに近い驚き。
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同時代の設定で、ナチス・ドイツ占領下のフランスを舞台に、プロパガンダとして存在していた映画会社・コンティナンタルにて、ナチスに抵抗しながらも映画を撮り続けた実話をもとにしたフランス映画”Laissez-passer”レセ・パセ [自由への通行許可証]』とは対照的。

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どちらかというと、ユダヤ系イタリア人で強制収容所に送られ、極限状態を舞台設定としながら、ユーモアを絶やさず、「これはゲームだ」と子どもに嘘をつき続けるというRoberto Benigniの “Life is beautiful”に近い印象を持った。
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by yokopw | 2006-05-01 23:37 | 映画  

皇帝ペンギン/ March of the Penguins

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皇帝ペンギンの1年間を追ったドキュメンタリ。
1年間という時の経過をずっと追っているのに加え、男性と女性のナレーターにフランス語で「シュポシュポ」とささやかれると、ペンギンどうしが愛を語らっているように聞こえ、ドラマ性を感じる。
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丸っこくて、短い足でヨチヨチ歩く、のんびりとしたイメージのペンギンだが、極寒地でのかなり過酷な生活。イメージとのギャップが大きい。
100キロもの長い道のりを20日間かけて歩き、出産地に赴く。そこで、求愛し、卵を産み、ママがエサをとりに戻っている間、パパがひたすら卵を温める。

驚きだったのは、産んだ卵をパパに渡すところ。当然、足でキックするしか方法がないが、ママの足を離れてすぐにパパが卵をキャッチし、足の上に乗せないと、卵が凍ってしまう。実際、キャッチに失敗して凍ってしまった卵も。
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また、卵から孵った赤ちゃんペンギンの敵はいっぱい。鳥に自分の子どもを襲われ、食べられてしまった親が、気が狂ったのか、他の親から赤ちゃんを取り上げようとしている場面もあった。
動物の映像は「スナップショット」でみること多いが、ライフスパンで見ると、発見も多い。
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by yokopw | 2006-05-01 23:28 | 映画  

ヒトラー「最後の12日間」/ The Downfall

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ヒトラーの私設秘書Traudl Junge(当時22歳)の視点から、ヒトラーが追い詰められ自殺するまでの12日間が描かれているこの映画は、彼女自身のインタビューで締めくくられる。

"I realized that she (Sophie Scholl)
was the same age as me,
and I realize that she was executed
the same year I started
working for Hitler. At that moment,
I really sensed it was no
excuse to be young and that
it might have been possible to find out what was going on." --

ゾフィ(ミュンヘン大学の学生で反ナチのビラを学内にまき逮捕・処刑)と私は同じ年齢で、私がヒトラーの秘書を始めた年(1943)に彼女は処刑された。若かったというのは全然言い訳にならない。何が起きているのか、知る方法はあったであろうに… Traudl Junge:Hitler's Secretary

ヒトラーを一人の人間として描く時期にきているのかどうか、ドイツ国内でも非常に議論をよんだ作品である。
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なんといってもヒトラー役のBruno Ganzの演技がすごい。ちょっと猫背気味、パーキンソン病からくる指の震え、急に怒鳴り散らす荒い気性。ベルリン市内に迫るソ連軍を前に打つ手を失い、現実と妄想とが入り交じって滅茶苦茶な指示をする様は、常軌を逸した冷酷な独裁者というより、追い詰められた一人の人間の行動として、ある意味、違和感なく受け入れられる。
Ganzは「自分で役に共感をもてず、さらに、人々にヒトラーという人物像に共感をもたせることができなければ、役者として自分は失敗したということだ」とコメントしている。

一方、違和感ありまくりなのが宣伝大臣ゲッペルスとその家族の存在である。ヒトラーを信奉し、ヒトラーが指揮不能に陥っているのが分かっていても、なお、狂信的に従い続ける。何かにとりつかれているような、そんな怖さを感じるとともに、彼に対する興味がわく。
ゲッペルスは、ヒトラーとエヴァ・ブラウン(自殺直前に結婚してヒトラー夫人となる)の自殺を見届け、6人の子供に青酸カリを与えて殺した後、夫人とともに自殺する。

ゲッペルスについては、“The Goebbels Experiment”という映画が昨年、ドイツで製作されている。1924年から1945年までの彼の日記をもとに、自分に語りかけるような構成になっているようだ。

ドイツでは、ここ数年、次々と第二次世界大戦でのタブーに挑戦する映画が製作されている。いちいち賛否両論起きているようだが、タブーに向き合い、議論をし続けることがいかに大変かは、日本人だからこそわかるし、また、日本との差を感じずにはいられない。
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by yokopw | 2006-04-05 21:02 | 映画  

「白バラの祈り」

★★★★

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Sophie Scholl: The Final Days

1943年のナチス政権下、ミュンヘン大学で生物・哲学を専攻する学生Sophie Schollが、同大学医学部の学生であった兄Hansと一緒に学内で反政権を内容とするビラをまき、ゲシュタポに捕まり、取調・裁判・処刑されるまでの6日間に焦点をあてたドキュメンタリー映画。
「白バラ」と称する非暴力で反政権・戦争終結を主張する学生運動。

覚悟はしていたが、拷問など残虐なシーンはなく、淡々と比較的予想通り展開していく。なのに映画館から出たくなるような怖さがある。

忍耐強い取調官(Robert Mohr)は、徐々にSophieを追いつめていく。彼女の「ノンポリ・何もしていない」という主張は確かに徐々に崩れ、彼女がビラをまいたことを自白する。だが、一方で、「ナチスは間違っている。ドイツは戦争に負けている」という認めたくない事実を突きつけられ、根底のところで徐々に変えられているのはMohr調査官。彼は、反省をしているという調書に変えて彼女を助けてもいいとの提案もする。が、彼女は拒否する。なぜなら、自分は間違っていないから・・・・

彼女が特に政治に偏向していたというわけでもなく、ただ、おかしいと思った者をおかしいという勇気があったという「普通の大学生」として描かれているだけに、余計に自分を投射し、「私だったら・・・」という疑問を考えさせられる。

ベルリンの壁の崩壊により、ゲシュタポの取調記録等が公開されたことで、取調に焦点をあてて再度映画化されたらしい。(これをテーマにした映画としては“The White Rose”や“The Last Five Days”(どちらも1982)がドイツで製作されている)

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写真をみると、さらにリアルになる。
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by yokopw | 2006-03-01 22:54 | 映画