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敵こそ、我が友 (Mon Meilleur Ennemi )

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元ナチSSの高官、クラウス・バルビーの生涯を描いたドキュメンタリー。
ゲシュタポ責任者としてフランスのリヨンで残虐な行為を行い、87年にフランスで終身刑の判決を受けるのだが、その間、約40年間の逃亡生活がすごい。
戦争後、アメリカの情報機関は、反共の専門家としてバルビーを好待遇で雇い入れる。戦犯としての彼を庇いきれなくなると、バチカンを通してボリビアへ逃がす。そこでも、情報提供者とのネットワークやゲリラ戦の戦い方、拷問のテクニック等を武器に、軍中枢に食い入る。1967年のチェ・ゲバラの暗殺を指導したとも。また、映画では、ボリビアの労働組合運動活動家が、彼の指揮下で受けた拷問について、涙ながらに証言をしている。彼の信条は戦中・戦後一貫しており、アンデスでの第三帝国復活に向けても活動を行っている。そしてその背後で支援をしたり、動向を知っていながら黙認したりしていたのはアメリカ。

1時間半だが、内容はかなり凝縮されており、いろいろなことを感じた複雑な映画であるが、そのうちの一つは、やはり法的裁きの限界。彼はナチハンターにより、40年を経て逮捕されるのだが、リヨンでの裁判では、当然のことながらリヨンで彼が行った拷問の数々について、口を割るまで一本ずつ歯を抜き取るといって拷問された等等衝撃的な証言がされ、最終的に「人道に対する罪」で終身刑となるのだが、そこでは戦後の彼が行った行動については何も触れられず、彼の弁護士も、彼は指示に正確にしたがっていただけで、ベトナムでのアメリカ将校や、アフガンでのロシア将校等の活動と同じではないかと主張している。だが、実際に、彼がボリビア入りしたことで、軍部の取り締まりは強化され、それによる被害は拡大したのは事実である。

また、反共のためとはいえ、ナチ親衛隊を雇い入れ、庇いきれなくなると南米に逃がすというアメリカ。その経験、人脈を巧みに利用した南米政府。バルビーが、みんなで自分のことを利用しておきながら、裁かれるときは自分のみとコメントしていたというが、本当にそうである。

バルビーは60年頃、フランスのナチハンターに見破られ、捕まりそうになるが、実際に逮捕されるにいたるのはその20年後。ボリビアから彼の引渡しを求めるに際し、ミッテラン大統領下のフランスはかなりの資金提供を行ったらしい。彼の引渡しを求めるというところでも、また、国家の政治的配慮が大きく働いている。

by yokopw | 2008-07-27 11:21 | 映画  

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