善き人のためのソナタ (Das Leben der Anderen/ The Lives of Others)

すばらしい映画である。f0064307_17123872.jpg
1984年の東ベルリン。国家保安省(シュタージ)のヴィースラー大尉は、徹底した尋問により西ドイツ亡命への協力者等、共産主義体制に背く人々次々に検挙。彼の揺るぎのない共産主義への忠誠は、しかし、劇作家ドライマンとその同棲相手の舞台女優クリスタの監視により、激しく揺さぶられる。そして、上層部に対し、ドライマンの反体制活動を隠すようになる。自分の立場を危険にさらしても・・・

ドライマンもまた、友人の死を前に、劇作家として活動を続けるため、体制が好む言動しかしてこなかったことに、価値観をゆさぶられていた。劇作家として、あるいは舞台女優として活動するために、体制側に媚を売らなければならない一方、体制側はその足元を見て、女優をほしいままにくどく。共産主義に、また職務に忠実であったヴィースラーは、24時間の2人の監視及び盗聴から、2人の苦悩をつぶさに観察し、そして感情が移入してしまう。

ドライマンの西ドイツへの匿名寄稿を黙認し、それがクリスタの裏切りにより幹部にばれた決定的瞬間にも、彼はドライマンのアパートから証拠品であるタイプライタを盗み出すことで、彼の窮地を救う。これにより、彼は幹部からの信用を損ない、降格されることとなるのだが。

この映画自体はフィクションだが、シュタージ(ナチスドイツのゲシュタポ、ソ連のKGBのような存在)の尋問の仕方や情報提供者の活用の仕方など、詳細に調べ上げており、実際、シュタージに尋問を受けた多数の映画関係者も作品制作に関与しているようで、時代背景等ノンフィクションさながらである。
特にヴィースラー役のウルリッヒ・ミューエ(Ulrich Mühe)の、最初は能面のような無表情さが、次第に微妙に感情を表すようになってくる演技がすばらしい。演技を超えた、彼の生き様の反映なのかもしれない。彼は東ドイツ出身で旧東ドイツ時代には、シュタージの監視下におかれており、当時の妻であった女優イェニー・グレルマンがミューエの行動を監視し密告していたと言われている(グレルマン本人はこれを否定

東西ドイツ統一後、ドライマンは政府に自分の個人情報の開示を請求し、ヴィースラーの存在をしることとなるというストーリー展開も驚いた。徐々に国が民主化するというのではなく、東西統一により、西側の法制度を一度に適用したからこそ可能となったのであろうが、一方、拷問をしたシュタージが誰かといったことも明らかになるわけで、混乱も多かったであろう。

これは2006年のドイツ映画。東ドイツを扱った映画として、「グッバイレーニン」/a>
f0064307_17242177.jpg  や「トンネル」を見たが、どれもすばらしい映画である。
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by yokopw | 2008-04-13 17:11 | 映画  

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