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教会によるプロパガンダ ~プラド美術館展~

プラド美術館展(東京都美術館~6/30)では、ベラスケス、エル・グレコ、ティツィアーノ、ルーベンスなどの作品が少しずつ取り揃えられている。ピカソやベラスケスの王女マルガリータといった有名な絵画はないものの、まあまあ見応えはあるという感じ。

絵そのものより、解説に書かれていた“対抗宗教改革(counter-reformation)”という単語をみた瞬間、衝撃を感じた。今回の絵画展中心である17世紀というのは、宗教改革を受けてカトリック教会が動揺し、建て直しをはかろうとしていた真っ最中。映像はいかなるスピーチよりも説得力がある。一部のエリート層以外は文字が読めないとなれば、なおさらである。教会が絵画や彫刻という“メディア”を使って、人々にカトリック教会の教えの正しさを伝えようとするのは当然の帰結である。

例えば、この時期、元娼婦でキリストの教えによってその過去を反省改悛し、敬虔なキリスト教徒となったマグダラのマリアが題材としてこのころ多く取り上げられている。「罪深いあなたも、懺悔をすれば救われますよ」というメッセージが伝わってくる。
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今回の展示にもあったムリーリョ作、「無原罪の御宿り」も、聖母マリアを崇拝するカトリック教会の教えを具体化した作品である。

また、この頃から、十字架から下ろされてマリアが膝で抱いているところのイメージが、岩場を背景にしたりなど、ドラマチックになってくる。事実の描写というよりドラマ性をもたせ、より人々の感情に訴えるようになってきているということであろう。ミケランジェロのピエタ像もこういった背景からでてきている傑作。教会によるプロパガンダ ~プラド美術館展~_f0064307_23234291.jpg

絵画や彫刻の系譜も、「いかに正確に写実するか」「いかにパトロンの意向に沿ったものとするか」ということから、「いかに自分が感じたとおりに表現するか」ということへの解放の歴史なんだなと感じました。

by yokopw | 2006-04-10 23:25 | PR  

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