ヒトラーの贋札(Die Fälscher,The Counterfeiters)

ナチスがイギリス経済をかく乱するため、強制収容所のユダヤ人達に紙幣偽造をさせたベルンハルト作戦を映画化したもの。実際に1億ポンド以上が偽造されたとか。

強制収容所送りとなった囚人の中から印刷工や元銀行員、通貨偽造詐欺師等をほかの囚人から完全に隔離し、彼らにはほかの囚人とは破格の待遇(といっても白いシーツ付きのベッドとか歯ブラシ支給とか、シャワーが浴びられる等のレベルではあるが)で処遇し、その代り、ポンド偽造に従事させる。囚人の間で起こる、ナチスの利益となる偽造に協力するのか、あるいはサボタージュをして殺されるか、葛藤が描かれている。
実際に、ポンドが成功した後はドル紙幣の偽造を命令されていたが、それはサボタージュにより完成をだいぶ遅らせたようである。


映画の主人公であるサリーは贋札師で、要するに偽札や偽造パスポートを作って生業を立てていたわけで、そういう意味では犯罪者である。一方、収容所の中で彼は、絶対仲間を見捨てないというモラルを徹底するモラリストでもある。
いくら多少他の囚人よりもいい待遇を受けているからとはいえ、ナチの作戦に加担することは、ユダヤ人からすれば当然、自分たちの首を絞める結果をもたらすわけで、正しいことではないかもしれないが、「できる限り生きることを優先」させ、仲間(自分も含めて)を助けることに善悪のボーダーを引いているところが非常に面白い。

この作戦に駆り出されたユダヤ人印刷工エアドルフ・ブルガーの本を基に制作。解放後、彼は偽札作りに関与させられたこと(あるいは強制収容所のこと自体)に触れたくなく、長らく沈黙を守っていたが、ドイツの右派的動きを懸念して、筆を執ったとインタビューで応えている。
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by yokopw | 2009-01-28 10:47 | 映画  

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